要点
法律に誰が払うかの決まりはなく、お墓を引き継ぐ祭祀承継者が負担するのが原則的な考え方ですが、親族で分担するのも自由です。実際には承継者の全額負担・相続人での頭割り・遺産からの差し引きのどれかに落ち着くことが多く、遺産から出すには相続人全員の合意が必要です。
墓じまいには、墓石の解体・撤去の工事費、閉眼供養のお布施、離檀料、新しい供養先の費用、役所の手数料など、まとまったお金がかかります。「長男だから全部払うのが当然なのか」「兄弟で分けるべきなのか」。ご相談でとても多いのが、この費用負担の問題です。法律の考え方と、実際に多い決め方をご紹介します。
法律に「誰が払うか」の決まりはない
まず知っておいていただきたいのは、墓じまいの費用を誰が負担するかについて、法律に明文の規定はないことです。お墓は祭祀財産として祭祀承継者が引き継ぐため、その維持や処分にかかる費用も承継者が負担するのが原則的な考え方とされています。とはいえ、これは「承継者が払わなければならない」という強制ではなく、親族で分担することは自由です。
実際には、次の3つのどれかに落ち着くことが多いです。
- 祭祀承継者が全額を負担する
- 相続人(兄弟姉妹など)で頭割りする
- 遺産の中から先に墓じまい費用を差し引き、残りを分ける
遺産から差し引く方法は、合意が前提
「亡くなった親の預貯金から墓じまい費用を出したい」という考え方は自然ですが、注意点があります。墓じまいの費用は、葬儀費用のように相続財産から当然に支払えるものとは扱われていません。相続人全員の合意があれば遺産から支出できますが、一人でも反対すれば、勝手に引き出して使うことはできません。
そのため、この方法をとる場合は、遺産分割協議の中で「墓じまいの費用として○○円を承継者が取得する」あるいは「費用を差し引いた残額を分ける」と明記しておくのが確実です。あとから「勝手に使った」と言われるのを防げます。
頭割りにする場合の決め方
相続人で分担する場合は、次の点を先に決めておくと、もめにくくなります。
- 対象にする費用の範囲。工事費だけか、お布施や供養先の費用まで含めるか
- 見積もりを取る前に、上限の目安を共有する。「合計で○○万円まで」と決めておくと、供養先選びも進めやすくなります
- 支払いの窓口を一人に決める。石材店や寺院への支払いは承継者がまとめて行い、他の相続人は承継者に送金する形が実務上は楽です
- 領収書を全員に共有する。透明にしておくことが、いちばんの予防策です
承継者が全額負担する場合の注意
承継者が一人で費用を持つ場合、その負担を理由に「他の財産を多く受け取りたい」と考えるのは自然です。ただし、法律上、祭祀承継者が相続分を多くもらえる決まりはありません。多く受け取るには、他の相続人の同意を得て遺産分割協議に反映させる必要があります。
逆に、承継者以外の相続人からは「お墓は承継者のものなのだから、費用も承継者が持つべき」という意見が出ることもあります。どちらも一理あるため、正解を法律に求めるより、「今回はこう決める」と合意を作って書面に残すことが大切です。
費用の目安を先につかむと、話が早い
分担の話は、金額が見えないと始まりません。墓じまいの費用は、お墓の広さや墓石の量、立地(山あいや車の入れない場所は高くなります)、新しい供養先の種類で大きく変わります。まず地域の石材店に現地を見てもらって見積もりを取り、その数字を持って親族で話し合う、という順番をおすすめします。
墓じまい案内では、お墓の詳しい場所をお教えいただければ、地域の石材店が現地に行き、正確なお見積もりをお出しします。相談者様に費用はかかりません。親族での話し合いの材料としてご活用ください。
もめてしまったときは
話し合いがまとまらない場合、費用負担そのものを裁判所で決める手続きは基本的にありません。遺産分割の一部として家庭裁判所の調停で話し合うか、弁護士を代理人に立てて交渉することになります。ここは弁護士の領域で、行政書士や石材店では代理交渉はできません。早い段階で「誰が承継者か」「費用の範囲」「支払いの窓口」の3点を決めておくことが、結局はいちばん安く済む方法です。